官房長官の記者会見テキスト(2011年3月15日11時7分から23分間)

【冒頭発言】

官房長官:それでは、総理からの発言に続きまして、私(官房長官)の方から若干申し上げたいと思います。今朝ほど来の、前回、私がここで会見をさせていただいた以降の主な生じている事象について、まずは御報告を申し上げます。なお、詳細な時間・数値等については、これは正確なものを東京電力において発表をさせるようにいたしたいと思いますので、全体の大きな流れ、状況について、私(官房長官)の方から御説明をさせていただきます。

 1つは、4号炉についてでございます。4号炉については、現在、火災が生じているという状況でございます。こちらの原子炉は、震災発生時において休止中の原子炉でございました。しかしながら、この間の流れの中で、炉そのものには、いわゆる燃料等はございませんが、使用済み核燃料がこの大きな意味での4号炉の中にございまして、そちらがこの間の経緯の中で熱を持って、そして、そこから水素が発生をして、いわゆる水素の爆発、これまで1号機、3号機等で生じてきたような事象が起こったものと推察をされております。現在、燃えておりますのは、その1号炉と3号炉の場合は上空まっすぐに吹き飛んだものが内側に崩れたといいますか、燃えているという状況であると推察をいたしているところでございます。なお、念のためでございますが、核燃料そのものが、いわゆる火災になるということはございませんので、この点は是非とも御理解をいただきたいと思っております。その結果としては、水素が出ている状態でありましたから、同時に放射性物質もその時点から排出をされていたものと思われますが、全体が建屋で覆われている状況ではなくなりましたので、これが大気中に出ているという状況になっております。何とか火災を早期に消火をし、あるいは鎮火をし、その上でこの使用済み核燃料の冷却を進めることで、事態を収束させたいと考えているところであります。

 一方、2号炉の方で「ポン」というような音がしたという事態が生じました。その方が時間的には30分程度遅れた6時半過ぎだったかと記憶をしておりますが、これは従来から申し上げておりましたが、2号炉については上空に穴も開いておりましたので、少なくとも大きな水素の爆発の起こる可能性は低いということを申し上げてまいりました。そうした中でありますが、小規模の水素の爆発が起こったか、何らかの爆発的事象が起こり、その結果として、これは朝の時点の丁度会見で御報告を申し上げたような圧力部分の一部が若干の破損をしたのではないかと思われております。ここから若干の放射性物質が気体として流出をしていることが推察をされている状況でございます。2号炉から煙が若干見えるというような報告もございますが、これは先ほど私が御説明をした欠損のあると思われる部分が、水と水蒸気の交換をする部分でございますので、ここから水蒸気が出ているものと推測をいたしております。

 こうした状況の中、現在、少なくとも、この会見に下りてまいります直前の情報として、1号機、2号機、3号機とも注水作業を継続いたしております。今のところ、順調に3つの原子炉とも注水が進んでおりまして、冷却の効果が生じているものと思われますが、こうした状態をどうやって維持していくのかということが、4号機との関係で、今、早急に取り組まなければならない、取り組んでいる課題でございます。放射性物質、放射性濃度の状況でございますが、若干時間が経っておりますが、10時22分時点のモニタリングの結果として、2号機と3号機の間で30mSv/h、3号機付近で400mSv/h、4号機付近で100mSv/hがそれぞれモニタリングの結果として出ております。従来の「μ」と単位が1つ違っております。従来の数値と異なりまして、身体に影響を及ぼす可能性のある数値であることは間違いありません。なお、是非冷静に受け止めていただきたいのは、これはまさに放出がされていると思われる部分近くの数値でございますので、距離が遠ければ遠いほど、この数値は落ちていくというものでございます。こうした状況の中でございますので、こうした事象の生じているプロセス、6時台の時点で、当該周辺におられた職員800名のうち、注水要員の50名を残し、一旦退避をいたしておりますが、先ほど申しましたとおり、この会見に下りてくる時点で、注水作業を続けているという報告を受けているところでございます。

 こうした残念な状況、国民の皆さんに大変御心配をおかけする状況となっておりますが、こうした事態にも備えて、20km圏内からの退避をこれまでお願いしてまいりました。更に、実際にこうした事態に陥りましたことから、更に万全を期す観点から、総理から御報告いたしましたとおり、20~30kmの圏内にいらっしゃる皆さんには、外出することなく、建物など内部にいていただきたいということをお願い申し上げます。是非その折には窓を閉めていただき、機密性を高めていただきたい。換気はしないでいただきたい。洗濯物は屋内に干していただきたい。先ほど申しましたとおり、距離が遠くなれば、それだけ放射性物質の濃度は低くなってまいります。20kmを超える地点では、相当程度薄まって、身体への影響が小さい、あるいはない程度になっていることが想定されておりますが、万が一にも備え、なおかつ、こうしたものは気象条件にも影響されますことから、こうした圏内の皆様には、こうした大気にできるだけ触れることのないよう、屋内等におられることをお願いする次第でございます。

閣議の概要について

 なお、この私の会見は、閣議後会見にもなっておりますが、本日の閣議においては、一般的な案件に加えまして、総理から閣僚各位にこうした状況のうち、閣議の時点で把握していた概要を御説明申し上げ、内閣を挙げてこの事態に全力を挙げて取り組んでいくことと同時に、原子力関係以外の震災の救命、そして被災者支援ということにも万全を期していくこと。このことの指示があったところでございます。

 私からは以上でございます。

【質疑応答】

記者:読売新聞のクリバヤシです。現時点でですね、圧力容器そのものが破損して、内部のその燃料棒等の放射線物質が外部に漏れ出す可能性について、政府としてどのように認識しておられて、それによって例えばその、被災地の東北地方ですとか、人口の多い首都圏に被害が及ぶ影響については、どのように可能性として政府は捉えているんでしょうか。

官房長官:1号機、2号機、3号機につきましては、現在も注水作業を進めておりまして、この間、一定の注水はされているものと思われて、これ正確な数字の変異は東京電力の方にお尋ね頂きたいと思いますが、圧力等の状況も一定の範囲で推移しているという報告を受けております。このことを何とか維持していくということを今努力しているところです。

記者:NHKのヤマグチです。長官先ほど4号機の火災のことを盛んに言及されていらっしゃいましたけれども、4号機の火災の方が2号機より深刻な状況なんですか。

官房長官:今時系列で4号機の方が事象がこの間では先に起きたというふうに報告を受けておりますし、私もそう認識しておりますので、4号機の方からご報告致しました。

記者:TBSのアクイです。サプレッションプールではなくて、格納容器そのものですね、2号機の格納容器に損傷はないんでしょうか。

官房長官:そういった意味ではその部分のところが損傷を受けているという蓋然性が高いという報告を受けております。

記者:長官、そしてその格納容器が欠損されますと、放射性物質が漏れるということは間違いないでしょうか。

官房長官:これあの、1号機、2号機、3号機とも従来から一定の範囲の人体に、周辺部でも影響の及ぼす恐れも少ないレベルの放射性物質が出ているということは申し上げてきたとおりです。

記者:4号機の火災でですね、使用済み核燃料が燃えることによる影響というのは、もう少し詳しくおっしゃっていただきたいです。

官房長官:いわゆる今現に普通の意味での火災が生じておりますので、是非誤解のないようにお伝えしたいんですが、通常の意味の一般にいわれる火災のような意味で燃えることはいわゆる燃料についてはございませんが、他の原子炉にあります状態と同じように、熱を発していて、そしてその結果として放射性物質が出るということはありうるわけであります。それがいわゆる今火事で起きている火が引火するとかそういう種類のものではございません。ですから早く消化をさせて、あるいは鎮火をさせて冷却するということが求められておりますが、そもそも火災が起きた、爆発が起きた原因として、一定の放射性物質は現に出ているというふうに思われますので、これを急ぎたいというふうに思っています。

記者:住民の避難の関係で確認なんですけれども、20キロ以内の方については、これまでと変わらず20から30キロについては自宅待機ということで新たに加わった、そういう理解でよろしいですか。

官房長官:そうです。

記者:毎日新聞のカゲヤマです。現状の20キロ避難で対応が十分とお考えでしょうか。事態の悪化を想定して、専門家の一部からは30キロ以上の避難をすべきだという指摘もあります。いかがですか。

官房長官:これは専門家の皆さんの意見を踏まえて、最終的には総理がご判断を致しました。何が一番安全なのかというのは、勿論様々な意見がありうることは間違いありませんが、現状の状況をしっかりと分析をして、そして専門家の意見に基づいてこうしたお願いをさせて頂いているところでございます。勿論、万全を期す、遠ければ遠いほど安全になるというのはこうしたことの性質でございますが、現状の放射能の数値等から専門家の皆さんの意見を踏まえて、20キロ圏内は退避して頂き、20から30の範囲の皆さんには屋外で大気に接することのないようしていただきたいと、こういう指示を示させていただいたと思っております。

記者:時事通信のコウケツです。2号機、3号機、4号機の周辺の放射能の濃度が、非常に危険な数値だと思うんですけれども、これと2号機の格納容器の損傷との因果関係についてはどのように考えてらっしゃるんでしょうか。

官房長官:むしろ、これは断定はできません。むしろ4号炉の爆発によってこの高い数字が出ているのではないだろうかという分析をして致しております。2号炉については、1号機や3号機、安定した状態ではありませんが、注水が一定の効果をあげておりますので、そしてポンという音がしてという状況でありましたが、その前後でのその周辺での数値の大きな変化が見られませんでしたので、そういう分析をしているという報告を受けております。

記者:それと4号炉の火災がこのまま続けば、どのような事態が想定されるんでしょうか。

官房長官:今東京の方においても、現地においてもですね、消火、鎮火に向けた全力を挙げているところでございまして、基本的には、これ繰り返しますが使用済み核燃料等にいわゆる一般的な意味で火が燃え移るということはありませんので、普通の建物の部分のところが燃え続尽きれば鎮火すると。でもできるだけそれが早い方がいいだろうと。温度が上がりますので。温度が上がることは放射性、使用済み核燃料にとって好ましい状況ではありませんので、こうした努力をしているということであります。

記者:2号機の格納容器の破損によって、放射能物質が外に出たという可能性については、どのようにお考えになっているんでしょうか。

官房長官:損傷によってですね、一定のものが出ている可能性については、十分ありうるというふうに思っておりますが、これは詳細なデータは東京電力の方から発表して頂いているか、これから発表されるかと思いますが、むしろ今の時点の高い数値については、4号炉の影響が大きいと。逆に2号炉の影響、変化は大きくそれに寄与していないのではないかと見られております。

記者:読売新聞のクリバヤシです。現時点でですね、かなり遠隔地の、被災地である三陸沿岸ですとか、首都圏の住民に対してはどのような行動を求められますでしょうか。

官房長官:基本的には総理からお示しいたしましたとおりですね、20キロから30キロの皆さんには自宅にいていただきたい、建物の中にいていただきたいという指示を繰り返しましたところでございます。ただ、放射能物質はすでにこれまでの会見でもお話しておりますとおり、大変遠方にも微量が飛ぶということ、これは否定はできません。しかし、それは人体に影響を及ぼすようなレベルのものではない。当然遠くに行けば行くほど薄まっていくということでございますので、そうした関係を踏まえてですね、ご理解を頂いて冷静に対応をして頂ければというふうに思います。

記者:特段の日常生活のままでよろしいということですか。

官房長官:その場合でも、勿論現に、これまでも女川原発で計測された等ございます。しかし、それは極微量であって、人体に直接影響を及ぼすような数値のものではないというふうに報告もされているかというふうに思いますが、そうした可能性はありますけれども、まさにそうした可能性ですので、いわゆる屋内に留まる等の政府としての指示は求めなかったものでございます。

官房長官:20キロから30キロの地域の市町村名をご報告をさせて頂きたいと思います。ちなみに、その全域が入っていない市町村もございます。それから20キロ圏内と重なっている地域もございます。広い意味で30キロの圏内にある一部がかかっている市町村の町名をご紹介を致します。田村市、南相馬市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村、いわき市になります。ただ、特にいわき市等は極、北西の一部でございますので大部分の方はかかっておりませんので、念のためご憂慮を頂ければというふうに思います。

記者:毎日新聞のカゲヤマです。一部報道で国際原子力機関IAEAのほうが天野事務局長が来て記者会見をして、第一原発の原子炉を安定させるために、日本政府から専門家の派遣を要請されたということを明かしているんですが。日本政府としていつ、どの時点で派遣を要請したんでしょうか。

官房長官:日本政府がIAEAに正式に要請をしたことは、私は承知しておりません。ただこの間、広い意味での地震の発生以来、広い意味での救援活動を含めて、これは世界の皆さんにご要請をさせて頂いておりますし、またこうした事態ですから、国際的な知見も含めてですね、あらゆるお知恵はお借りしたいとは思っております。

記者:昨日の発表の中で気になるのはですね、中性子線が検出されたと、一部ですね、あったんですが、これは再臨界の可能性があるというふうに考えていいんでしょうか。

官房長官:これは3号機の性質からここには中性子が出得るとの理解であります。

記者:性質ですか。

官房長官:はい。

記者:問題は無いんでしょうか。

官房長官:いや、勿論中性子は出ないほうがいいわけですが、極微量検出されたという報告をさせて頂いたんだというふうに思っております。記憶しております。

記者:テレビ朝日のコバヤシですが、4号機の火災によって高い数値が出ているのではないかということなんですが、そもそも4号機の火災はどれぐらいで消火できそうなものなのか、大きな火事なのか、小さな火事なのか、いろいろ説明を頂いても…

官房長官:まさに今現場においてはですね、そのことをどうやって早く消化するのかという努力を致しているところでございます。

記者:消火した後は注水をして、4号機について冷却をはかるということなんでしょうか。

官房長官:消火した後は、その状態を確認しながら安全に冷却をするその方法を勿論事前からシミュレーションをしておりますが、検討していくということになります。