官房長官の記者会見テキスト(2011年3月12日20時41分から27分間)

【冒頭発言】

官房長官:それでは、ただいまの総理からの発言にもございました、東京電力福島第一発電所の件について私から御報告を申し上げます。まず、本日15時36分の爆発について、東京電力からの報告を踏まえ、御説明を申し上げます。原子力施設は、鋼鉄製の格納容器に覆われております。そして、その外が更にコンクリートと鉄筋の建屋で覆われております。このたびの爆発は、この建屋の壁が崩壊したものであり、中の格納容器が爆発したものではないことが確認されました。爆発の理由は、炉心にあります水が少なくなったことによって発生した水蒸気が、この格納容器の外側の建屋との間の空間に出まして、その過程で水素になっておりまして、その水素が酸素と合わさりまして、爆発が生じました。ちなみに、格納容器内には酸素はありませんので、水素等があっても爆発等をすることはありません。実際に東京電力からは、格納容器が破損していないことが確認されたと報告を受けております。繰り返しになりますが、このたびの爆発は原子炉のある格納容器内のものではなく、したがって、放射性物質が大量に漏れ出すものではありません。東京電力と福島県による放射性物質のモニタリングの結果も確認いたしましたが、爆発前に比べ、放射性物質の濃度は上昇いたしておりません。報道されました15時29分の1,015マイクロシーベルトの数値でございますが、この地点の数字はその後、15時36分に爆発がございましたが、15時40分の数字が860マイクロシーベルト、18時58分の数字は70.5マイクロシーベルトとなっておりまして、爆発の前後でむしろ少なくなっております。その他の地点も、ベントといいますが、容器内の水蒸気を、圧力が高くなることを抑制するために外に出す。このことは今日の未明来、申し上げてきておりますが、これが14時ごろから行われまして、その前後で一旦高くなっておりますが、その後、15時36分の爆発を挟んでも、いずれも低下していて、そして低いレベルにとどまっております。したがいまして、現時点で爆発前からの放射性物質の外部への出方の状況には大きな変化はないと認められるものでございますので、是非、冷静に対応していただきたいと思っております。その上で、こうした現状を踏まえ、今後、懸念される原子炉容器及び格納容器の破損による災害を未然に防止するため、東京電力が容器を海水で満たす措置を取ると判断いたしまして、海江田経済産業大臣において、そのことの指示をいたしました。その際、併せてホウ酸を用いることによって、念のために、万が一にも再臨界などの懸念される事象が生じないよう工夫することも確認いたしております。政府としては、こうした措置の準備・手順が適切であることを経済産業省、原子力安全・保安院ともども確認いたしまして、妥当なものと評価いたしております。この手順は、既に20時20分、着手いたしております。なお、この東京電力福島第一発電所に係る避難指示につきましては、こうした爆発の状況、そしてそれによる、今回決定し実施いたしました対応策等の可能性が見えてきた段階で、万が一にもの対応策として20㎞圏内から退避いただくことへと拡大いたしました。これまでの対応方針同様、今回の措置によって10㎞から20㎞の間の皆さんに具体的に危険が生じるというものではございませんが、新たな対応を取ることの可能性が出たことにかんがみ、念のために、更に万全を期す観点から20㎞に拡大いたしたものでございます。住民の皆さんは、こうした事情、経緯、判断に基づくものでございますので、警察・自治体等の指示に従って冷静に対応していただきたいと思っております。

【質疑応答】

記者:日本テレビのヒラモトですけれども、確認しますけれども、そうしますと爆発的なものが見られたというものは原子炉に対する影響は全くなかったということでよろしいですか。

官房長官:格納容器の中に原子炉があります。その格納容器自体の損傷が認められないということでございますので、そういうことであります。

記者:昨夜の崩壊というのは今後の作業であるとか、今後の原子炉から放射性物質が漏れることに繋がってる可能性というのは、これ高まるやはりものに繋がるんでしょうか。

官房長官:勿論建屋が無いよりはあるほうが安全性が高いことは間違いありません。だからこそ、早急にそのリスクを低下させるために、ホウ酸を利用することと同時に、海水を満たす、容器を海水で満たすという対応策を判断したものであります。

記者:あとこれまでですね、念のための措置として、避難範囲を広げているのは念の為にとっていることがよくわかるんですけれども、一方住民からすると広がることで、特に今回は海水で満たす新たな措置をとるにあたって、本当に危険性はないのかという心配が広がっているんと思うんですけれども、そこはその拡大を広げることと念のためということの、整合性というかですね、なぜそういう措置になっているのでしょうか。

官房長官:住民の皆さんは地震、津波だけでも、相当な生活へのダメージを受けておられます。勿論住民の皆さんの中には、高齢者の方、障害をおもちの方、お子さんを抱えていらっしゃる方、多々色んな事情の方がいらっしゃいます。こうした状況に対する対応としては、できるだけ必要な、ある意味で最小限の退避等にとどめるべきという考え方も、一方ではそういった観点からあろうかと思います。一方で、原子力に係わる問題については、しかもこのスタートが未曽有の大地震、大津波ということに端を発している問題でありますから、まさにもし必要最小限ということで行った場合の万が一のリスクというものも、やはり私どもはしっかりと考えて、そして万全を期すべきだろうという考え方でこの間、対応を致してきているところでございます。その両者の兼ね合いの中で、その時点等の状況や対応策に応じて、必要最小限から一つ越えたところの万全の措置を、この間つねに取りつづけてきているということでございまして、今回も建屋の上部なんですけれども、の崩壊がある。そうしたなかで海水によって容器を満たすというこれまでいない措置をとるということで、想定されている中では、これによってしっかりと当該原子炉はコントロール、管理下におかれるものと思っておりますが、万全の策を取らせて頂いたということでございますので、住民の皆さんにはそういったことではご不便をお掛けしますが、まさにそのことによって万全を期していることをご理解を頂ければと思います。

記者:読売新聞のコバヤシです。今回の措置を取ることによって対象地域を広げるということですけれども、海水で満たすという措置をとることによって新たに生じるリスクというものはどのようなものがあるのでしょうか。

官房長官:基本的には様々なことを分析致しました。専門家による分析も行いました。専門家も当該当事者である東京電力、それから原子力安全保安院、そして原子力安全委員会、それぞれの専門家の皆さんの専門的な分析も頂き、そのことを私も含めて、総理、海江田経済産業大臣、必ずしも専門家ではありませんが、納得の行くように繰り返し説明、確認を致しました。そうした中で新たなリスクはないものというふうに判断を致しまして、今回の措置に着手をすることとしたものでありますが、まさにスタートがこれまでに経験したことのない未曽有の大地震であり、大津波であるということ、そして海水を満たすということ、措置自体がおそらく事実上初めてに近い対応策であるということを踏まえて、さらに万全の措置を取ったということでございます。

記者:毎日新聞のカゲヤマです。海水に浸すということですけれども、これは冷却するという、これまでの、当初の目的と同じ方向でいらっしゃるんですか。

官房長官:はい、そういうことです。

記者:さらに、20時20分に着手したということですが、完了見込みの時間は何時になっていますでしょうか。

官房長官:この格納容器を満たす時間でありますが、詳細にはポンプの稼働の状況等によって正確に予め決めることができるわけではありませんが、概ね5時間から、プラスα数時間という範囲内ではないだろうかというふうに考えております。

記者:日本テレビのヒラモトですけれども、その先ほどの爆発で負傷者が出るなど、現場でですね、作業状況がいちいち被害が出ていると思うんですけれども、その作業はですね、作業員の補充も含めて今万全であるのか。あとこれからは夜も暗くなっていますけれども、その度は朝まで万全な措置でやっていくということでよろしいんでしょうか。

官房長官:そのとおりでございまして、残念ながらその間負傷された方等も出ておりますが、本当に細かい技術的な手順を含めて事前に説明、報告を求めて、なおかつそれがしっかりとできる体制になっているかという報告、確認をした上で、行っております。

記者:補充の作業はすべて万全な体制でもう行なわれているということなんですか。

官房長官:少なくとも事前に想定できる点についてはいずれもきちんと説明を求めて確認の上スタートさせています。

記者:第二発電所に対するですね、措置、そちらの方変更等また新たな対応としてあるんでしょうか。

官房長官:現時点ではございません。

記者:●●するのはあくまで第一…。

官房長官:

はい、はい。

記者:産経新聞のノダですけれども、夕方のですね枝野長官の記者会見では、その退避するんですね、対象についてですね、6時に出てくる放射性物質の調査結果を見てですね、検討するとおっしゃっていたと思うんですが、先ほどの枝野さんの説明だと、その数値自体は下がっているんで、安全に向かっていることを考えると、なんかちょっと矛盾というか。逆なのかな、20キロに拡大することとかね、と思うんですが。その点はどうなんでしょうか。

官房長官:もし先ほどの会見の時にそのモニターの放射能の量のみで判断するというふうに受け止められたとしたら、それは若干申し訳ないというふうに思いますが、当然それは大きな要素であり、なおかつ今回の爆発的事象の原因、そしてそれに対する対処、そうしたことの総合的な判断の元で20キロ圏内からの退避という判断を致しました。

官房長官:失礼しました。先ほどの時間の話ですが、圧力容器に水を満たす。炉に水を満たす。原子炉に水を満たすのに5時間プラスαということになります。その周辺の格納容器を満たすためにはさらに日にち単位、10日ぐらいの日数はかかると思います。ただ、原子炉そのもののところにしっかりと海水で満たされておれば、これによって安定的に冷やされて管理された形で段々と安全な状態に入っていく、こういうことです。

記者:住民は10日ぐらい退避しないといけないということですか。

官房長官:ここはそれぞれまず5時間プラスα、5~10ぐらいの間と想定して頂ければと思いますが、その段階で一旦様子を見ます。それで放射線の量等のモニタニングをしっかり致します。その状況等を踏まえて、その時点で判断をしてまいりたいというふうに思っています。

記者:朝日新聞ですが。住民退避する前が刻一刻と変わったわけなんですが、住民情報を所有する東電の情報提供を見られて政府も判断していると思うのですが、東電側の会見を見る限り、状況把握、説明が少し不十分な印象があるんですけれども、大変難しいとは思うんですが、政府の中で、東電に十分な情報提供、情報共有ができていると受け取っていらっしゃるのでしょうか。

官房長官:この間、約24時間ぐらいになるかというふうに思いますが、東京電力に対しては常に繰り返し的確、正確かつ迅速な情報提供というものを繰り返し求めながら、こうした対応を取らせて頂いています。

記者:時事通信の●●です。放射線の数値なんですけれども、劇的に下がっている要因というのはなにかわかっているでしょうか。

官房長官:本日の4時頃にベントという措置を取りまして、その炉の中からですね、これは今日の未明ぐらいから何度かここでご説明を申し上げてきておりますが、炉の中の圧力の上昇を抑えるということで管理された形で若干の放射能を含むけれども、それを外に出すという措置のための手順が本日の14時頃できました。従って、それまで炉の中にあった放射能がその時点から外に出るようになりました。その結果、その時点、その直後のところは高い数値を示しておりますが、管理された形で出ていてというプロセスに入っておりますので、順次下がっていると、こういうことだと認識して頂いていいと思います。

記者:そうしますと、現時点の状況というのは、その政府の管理下にあるという認識でいらっしゃるということなんでしょうか。

官房長官:ホウ酸を用いて海水で炉を満たすというところまできちんとできれば、本日の未明来、申し上げてきております、管理された状況の中で人体に影響を及ぼさない範囲の放射能は含みますけれども、しっかりと管理、コントロールされて収束に向かうプロセスに入っていくというふうに思っております。

記者:一つ心配なのはですね、その周辺のモニタリングは何回もやっておられて、数値が低くなっているとのことですが。その放射性物質が風に乗ってですね、もうちょっと対象の広いところでモニタリングをやる考えはないんでしょうか。

官房長官:基本的には風向きによってどちらの方に向かっていくかということはありますが、どんどんこれは遠くに行くほど薄くになっていくものでありますので、近い部分のところでしっかりとモニタリングをして、これは特別リスクの非常に高い数字だったり、或いはリスクの高い数字が継続したりということでは、避難所周辺とかということを考えなければいけないというふうに思いますが。まさに確かに一時的に1000を超えるマイクロシーベルトの数字が出た瞬間も有りましたけれども、全体としてこの周辺のモニタリングの数値から見れば、これまで10キロ、今回20キロというところの地域の皆さんに人体に影響を与えるようなことにはならないというふうに思っております。

記者:NHKワグチです。先ほどの会見ではヨウ素(ヨウド?)の配布に言及してらっしゃいましたけれども、こうした●●漏れがないということはそれもないということですか。

官房長官:いつでも配布できるようにという状況は作っております。これは常に万一に備えた措置として取らせて頂いています。

記者:爆発の契機となったといわれる、●●と爆発の因果関係についてはどう。余震は続きますので、同じような爆発の機会がほかの原発で再現する可能性はあるのでしょうか。

官房長官:直接の因果関係等については、私は専門家でもございませんし、何がきっかけになったということについて、私が専門的にお答えすることは、専門家でもありません、かえって誤解を招くかなというふうに思っておりますが。今回の爆発がどういうことで起きたのかということについては、専門家の皆さんの分析でしっかりと把握ができております。そして、そのことは直ちに他の炉に起こりうるということについては、今のところ想定していないということの報告も受けております。

記者:毎日新聞ですけれども、その海水で冷やすということなんですけれども、10日ぐらい日数がかかるとおっしゃっていましたが、いわゆる安全宣言というか、住民の方々が元にご自身が戻るできる時期的なめど、どれぐらい今見ていらっしゃいますか。

官房長官:勿論住民の皆さんにとっては、できるだけ早く安全宣言をして、本来の生活の拠点にお戻りになりたいという気持ちが大変強いというふうに思っております。ただ今の時点ではとにかく身体に影響を与えることのないようにという万全の措置を取るということで、なおかつこれはスピードを要することでございますので、そのことを一個一個積み重ねてきているところでございますので、今のご質問についてはこれで、例えば炉を満たして、という1つのある段階になりましたら、勿論いろんな検討をして参らなければならないというふうに思っております。

記者:読売新聞のクリバヤシです。海水で炉を満たした後ですね、その海水というのは、循環させたりあるいは交換させたりするのではなくて、それは同じ海水のままで10日間冷やすことできるということなんでしょうか。

官房長官:高温でありますので、炉の中は現時点では。どんどん高温で水蒸気になってまいります。それをどんどん海水を注ぎ込むことによって満たしていくと、こういうことであります。一方で、このベントの措置をとっていることによってですね、その水蒸気が外に逃がされるということで、圧力が高まらない。ただしそこに若干の身体に影響を及ぼさない程度の微量の放射線が含まれると、こういうことになります。

記者:その場合の水蒸気が中に繋がる放射能の容器というのは、今までと変わらないということですか。

官房長官:むしろより低い水準で安定をするものというふうに思われております。勿論その時点でしっかりとモニタリングを続けてまいります。

記者:従前のようにですね、電力の供給レベルが戻るというのはいつぐらいになるんでしょうか。

官房長官:全体ということですね。

記者:ええ、先ほど節電というのを仰られていまして。

官房長官:今まさに危機管理のフェーズで、地震によって生じたリスクを抑えることのために全力をあげているところでございます。当然経済産業省の他の部局においては、経済活動、生活への影響もありますので、様々な今検討をして頂いてるというふうに、あるいはそのことの指示自体を出しておりますが、まだ現時点で対策本部として、あるいは官邸としてそのご報告を受ける段階ではございません。しっかりと危機管理を進めていって、こちらの方ことに一定のめどが立った段階と、それから国民生活に与える影響の大きさの度合いを見ながら、しっかりと対策本部として把握し、必要な対処をして参りたいと思っておりますが。ぜひ現時点でも電力が足りていないということは間違いございませんので、実は官邸についてもどうやって節電ができるかどうかいうことを事務レベルで検討して頂いておりますが、皆さんのそれぞれの生活においても、それをご努力を頂ければありがたいというふうに思っております。

記者:午前中の会見で、岩手県の2つの町の役場と連絡が取れないということでしたが、その後どうなりましたか。

官房長官:恐縮ですが、実はこの先ほどの党首会談以降ですね、私も前回の記者会見以外、この対応に全力をあげておりました。その点については松本龍防災担当大臣の指揮の元で危機管理センターの方で対応いたしておりますので、総務省なり危機管理センターとしての通訳として適切に必要に応じてお伝えをしてまいりたいと思います。

記者:産経新聞のノダですけれども、今日もですね与野党の党首会談があったんと思うんですが、その国会に休会の話が出ていると思うんですが、枝野官房長官としてはその国会の休会については何日ぐらいあった方が望ましいとお考えでしょうか。

官房長官:今私の立場は本当に法的な立場にとどまらず、菅総理の元、あるいはこの原子力の問題については海江田経産大臣と連携しながら、あるいは全体の地震対応ということでは松本龍防災担当大臣と連動しながら、この危機対応に全力をあげている状況でございます。国会対応については、まさに党においてしっかりと対応して頂けると思っておりますし、またその党の方に官邸を始めとして政府の状況等については適切にお伝えをしておりますので、適切な対応をしていただけると思います。

記者:その適切に党の方でやるんでしょうけれども、そのためには、今政府の方で全力を挙げている期間はどのぐらいやるのか、政府の判断がまずあると思うので、それはどれぐらいだとお考えでしょうか。

官房長官:そのこと自体を想定するよりも、今現に救出を待っていらっしゃる方もいらっしゃるわけです。避難所で寒い中、あるいはまだ必ずしも食糧、お水等が届いていないところも、少なくならずあると思っております。あるいは孤立した状態で助けを待っていらっしゃる方も少なくならずいらっしゃると思っております。そして今回の原子力のリスクを抑える等の対応もあります。今はそうしたことに全力をあげておりまして、率直に申し上げてそれ以外のこと、私自身検討しておりません。