官房長官の記者会見テキスト(2011年3月13日15時27分から26分間)

【冒頭発言】

官房長官:東京電力福島第一原子力発電所第3号炉につきまして、新しい情報が入りましたので私から発表をいたします。なお、この情報によっても、今避難をしていただいている避難の状況等について、新たな対応をする必要はありません。そうした意味では冷静に受け止めていただければと思います。まず、3号炉につきましては、今朝、原子炉の水位が低下をしたため、正確に言いますと、9時05分に圧力弁を開いて炉内の圧力を下げ、9時08分から真水の注入を開始いたしました。これにより炉内の水位が上昇し、炉心を冷却できる状況となりました。その後、この真水を注入する給水用ポンプにトラブルが生じまして、このため速やかにその水源を海水に変え、炉心への注入に入りました。しかし、当初この炉心への注水が不安定な状況となり、その結果として原子炉内の水位が大きく低下をいたしました。これに対して海水を注水する状況について確認を鋭意行いましたところ、再びしっかりと水位が上昇を始めました。繰り返します。一度注水の状況が不安定になり、水位が低下をいたしました。そのため、いわゆる炉心が水没しない状況が生じましたが、鋭意調査をいたしまして対応をとりましたところ、再び水位が上昇を始めました。この間、炉心を十分に冷却できない状況であったため、炉内において大量に水素が発生をしたことが予想され、この水素が原子力建屋の上部に溜まっている可能性が否定できません。繰り返しますが、水素が原子炉建屋の上部に、一番外側に溜まっている可能性が否定できません。したがいまして、3号炉におきましても昨日1号炉で生じたような水素爆発の可能性が生じたため、念のため速やかに御報告を申し上げた次第でございます。なお、放射能のモニタリングの状況でございますが、おおむね本日の10時以降、50マイクロシーベルト前後の数値で安定していましたものが、13時44分ごろから上昇いたしまして、13時52分には1,557.5マイクロシーベルトを観測いたしましたが、今ここに入ってくる直前に入手をした、その時点での直近の14時42分のデータでは、184.1マイクロシーベルトに低下をいたしております。したがいまして、最大値においても1,557.5マイクロシーベルトでございまして、これは例えば胃のエックス線検診1回分の量が600マイクロシーベルトでございます。この一番高い数値のところでも、その場に1時間いて1,557マイクロシーベルトという、これ胃のエックス線検診1回分でございますので、これの3回分弱という数値でございます。既にこの数値は184.1マイクロシーベルトまで下がっております。この数値はちなみに、東京-ニューヨーク間の往復1回分が200マイクロシーベルトであります。こうした状況にございますので、なお、水素が仮に発生をして、これが建屋の上部に溜まっている可能性が否定できないと申し上げましたが、万が一、これが昨日のような爆発を生じた場合であっても、昨日もそうでありましたが、原子炉本体、格納容器については問題が生じないという状態、その外側でしか爆発が生じませんし、そのレベルの衝撃には耐えられる構造になっております。また、この爆発的なことが万が一生じた場合でありましても、発電所の近くの場所での数値が先ほどのような数値でございますので、避難をしていただいている周辺の皆様の健康に影響を及ぼすような状況は生じないと考えております。皆様にも爆発的な事象の心配をおかけいたしますし、そうした可能性が否定できないという事実が明らかになったものですから、直ちにこうして発表をさせていただいているものであります。私から以上でございます。

【質疑応答】

記者:すみません、共同通信のテシマと申しますが、建屋の上部に水素が溜まっている可能性があるということなんですけれども、その水素を除去するとか、爆発しないようにもっていく方法というのはないんですか。

官房長官:基本的には建屋からもですね、あるいはそもそも炉の中からもですね、今回は前回といいますか、昨日と違いますのはベントがもう機能してて、基本的には外に空気、気体を排出するプロセスの中で起こっていることでございますので、実は可能性としてはすでに排出されている可能性も十分あるという状況にありますが。まさに念のため、可能性があるということでご報告を申し上げたところです。

記者:その3号炉では、いわゆるメルトダウン、炉心溶融ということは起こっていると理解してよろしいのでしょうか。

官房長官:実はこの辺の言葉の使い方を丁寧にやりませんと、炉心の一部が若干ですね、その炉の中で変形をするというというんでしょうか、そうした可能性は否定をできません。それは水没していない時間帯があったことは間違いありません。ただしかしながら、全体が一般的にメルトダウンと言われているような状況に至るような長時間に渡って水没していない状況が続いていたという状況ではありません。水位はすでに上昇を始めております。可能性があるということで、直ちにこの会見をセット致しましたので、水位の上昇を着実に今見守っているところでございます。

記者:読売のクリバヤシです。燃料棒が吐出したことでですね、燃料棒の表面のコーティングしてる金属が溶けて、中の燃料が実際に露出しているということを示すような計測データは確認されているんでしょうか。

官房長官:そのことと直接の話については、私は今現時点で確認しておりません。

記者:毎日新聞のカゲヤマです。そもそも最初真水を注入していたところ、トラブルが発生して、海水に変えて。これはどういうトラブルがあったんですか。

官房長官:これはポンプのトラブルだと報告を受けております。

記者:産経新聞のノダですけれども、この1号機と3号機なんですが、海水を入れているということなんですけれども、これ将来的に廃炉、潰すと使わないということも検討されるんでしょうか。

官房長官:海水を入れた場合には将来の復旧が著しく困難であるということは承知をしております。

記者:というのは、将来使えなくなる可能性があるということでよろしいんでしょうか。

官房長官:うん、これは今専門家からご報告を受けているのは、著しく困難であるという報告を受けております。そのことを前提にしながら、しかし安全性、万全を期すということでこういう対応をしているところです。

記者:TBSのアクイです。この放射線の数値が一時的に相当大きく上がって、その原因は何なんでしょうか。

官房長官:これすでにベント等の手続き、処理を行いまして、原子炉内の空気を管理された形で外に出すということをやっています。高炉の中で炉心が水没していない状況になりますと、放射線の発生がその時間は多くなるということで、一時的に数値が上がるということであります。

記者:危険を示すような数値ではないという意味で変わりないですか。

官房長官:この先ほど申しました、1557マイクロシーベルトという数字は、繰り返しますが、例えばこれを一時間で浴びた場合、同じ量を一時間浴びた場合の数字が1557でありますが、胃のX線写真、一回分が約600と聞いておりますので、身体に直接影響をおよぼす数値ではないというふうに報告を受けております。必要であれば、この後福山副長官の方からバックグラウンドブリーフはさせていただきます。結論として、身体に直接影響を及ぼす数値ではないという報告を受けています。

記者:産経新聞のノダですけれども、今までマイクロシーベルト、放射能測定のですね、数値が明らかにされているんですが、いずれも施設内の数値だと思うんですけれども、例えば、周辺1キロとか周辺5キロでその放射能がどれぐらいかというのはわかったりはしないんでしょうか。もしくはわからない場合は、今後なんか調査するお考えはありますでしょうか。

官房長官:できるだけですね、こうした調査というのは多くやった方がいいだろうというふうに思っております。今の会見は新しい事象が生じたということで、できるだけ早くということで参りましたので、そうしたことの段取りや状況については、改めてご報告をさせて頂きたいと思っております。

記者:ポンプのトラブル、復旧したということなんですが。

官房長官:いや、違います。ポンプのトラブルが真水の給水について生じましたので、これできるだけ給水が滞る時間帯は短いほうが良いということで、塩水、海水の注入をバックアップで用意をしておりましたので、そちらに切り替えると。ところが、そのバックアップの方の手順といいますが、段取りが上手くいかなかったようでありまして、一時的にそこからの注水が上手く行かなかったと。しかしそのことについては、直ちに復旧ができて。直ちにというか、ちょっと時間的な間というのは正確な数字を持ってきたものではありませんけれども、すでに注水が始まっているということです。

記者:この一時的に不安定になったというのは、注水が不安定になったというのは、海水に切り替えてから不安定になったということなんでしょうか。

官房長官:いや、繰り返しますが、真水をポンプで注水する、この真水を注水するためのポンプが機能をしなくなったものですから、それを海水によるものに切り替えた。ところが、これが上手くいかなくて、水位がさらに下がったということで、調べたところ若干そこに不具合があったと、これを直ちに復旧させて水位が上昇してきている、こういうことです。

記者:今後海水による注水が何らかのトラブルを生じて、上手くいかなくなるという可能性についてはどうですか。

官房長官:ですから全てのことにバックアップを用意をして、そうしたことに対応できるような手順、段取りをできるだけ多数用意するということを、今トラブルそのものに対する対応と同時に準備をしていると、今回の場合はそれがありましたので、真水のポンプが機能しなくなった時に海水に切り替えることができると、こういうことです。

記者:毎日新聞のカゲヤマです。今海水でやっているのをまた真水に切り替えてポンプのトラブルを解消して、真水に切り替えるというめどは立っているんでしょうか。

官房長官:これちょっと専門的なところは改めて確認をしなければいけませんが、おそらく一旦真水を入れておりますので、いや、海水を入れておりますので、真水に切り替えることに大きな意味があるとはあまり想定ができないんですね。きちんと冷却するということが何よりも大事だということですね。

記者:●●

官房長官:一般的にはこうした場合の冷却の水は真水を使うということがまず一般的であります。真水が足りなくなったということではなくて、真水の使っていたポンプがたまたま不具合が生じたということでありますので、真水を使っていたことに問題があったというわけではない。ポンプのバックアップをしっかり用意していたということが大事だということです。

記者:最大限安全に配慮するのであれば、おそらく最初から海水でどんどんやっていくわけのではないですか。

官房長官:結局注水できる量はポンプの性能によって決まります。能力によって決まります。ですから水そのものが足りなくなって、注水ができなくなったということであるならば、これは当然海水を始めから入れるべきだと思いますが、水の量に問題があったのではなくて、ポンプの方の問題であります。真水の量は今のところ十分な量があるということで、真水を優先的に注入をしてきた。しかしながら、そこのポンプが上手くいかなかった時にまさにそのポンプの回収よりも優先して、海水を入れるということで安全を期した。こういう対応をとったものだと報告に基づいて私はそう思っています。

記者:産経新聞のノダですけれども、ポンプのですね、不具合というのは、これは地震によるものなんですか。それともそうではなくて、単なる故障というか、あれなんですか。

官房長官:それはまだ必ずしも報告は受けておりません。まずはしっかりと放射能、原子力によるリスクを抑えるという万全の措置をとっていただき、その報告を頂きましたので、可能性として昨日のような可能性があるということで、できるだけ早くということで、この発表をさせて頂いてます。

記者:改めてその水素による爆発があった場合に対する備えというのは一体どういうことをしてらっしゃるのでしょうか。

官房長官:基本的には周辺のところからも退避がされております。そして、放射能による可能性ということでは、先ほど申しましたとおりですね、この間、当該原発周辺でモニターされている放射能の量から考えますに、すでに万全すぎるほどの万全の退避の指示を致しているところであります。一部体の健康上の理由等で、近いところにいらっしゃる方については、退避のための必要最小限の時間以外は屋内でいて、洋服などに万が一にも少しでもつかないほうが、これはベターでございますので、そうしたことはしていただいた方がいいと思います。

記者:時事通信のコウケツです。炉が露出、水位が下がったというのはどの程度まで下がったんでしょうか。

官房長官:正確な数字を持ってきておりませんが、かなりの程度は一旦は露出をした、これは間違いありません。ただし、すでに水位は上昇を始めておりますので、その時間は一定の限られた時間であるというふうに思います。

記者:ほぼむき出しになっていたというような理解でいいんでしょうか。

官房長官:それは全体の構造の中で専門的にご説明をいただい方がいいんだというふうに思っていいます。

記者:それとですね、予想される水素爆発でもその圧力容器とか、格納容器は大丈夫だとおっしゃいましたけれども、圧力容器と格納容器はどの程度の衝撃に耐えられるになっているのでしょうか。

官房長官:詳細な数字はまさに専門的にご報告を頂いた方がいいというふうに思いますが、まず内側からの相当な圧力にそもそもが作られておりますので、相当な強度があるものでないと、原子炉そのものが作れません。一方でこの外側の、昨日飛んだ建屋の部分はですね、万が一の場合に備えて何か内側であっても、内部の方に圧力がかからない、逃がすように、ある意味では、飛びやすくなっている、こういう構造を作っているというご説明を受けております。なおかつ、水素ですから、高いところに行きますので、可能性、想定される事態は最大でも昨日のような事態であると、こういう説明を受けまして、それについては了解をしています。

記者:そうすると、現在3号機は1号機と同じような処置をしている、全く同じ処置をしているということなんでしょうか。

官房長官:まさに水素のことについての状況が違いますけれども、基本的には大きな意味では、中の空気をベント等によって外に放出させながら、注水をしていくと。この水も海水であるということでは、大きな意味ではそのレベルにおいては同様の状態であります。

記者:こうして、福島の第一で次々と不具合が生じているわけですけれども、残りの炉について何か予防的な措置をとられるお考えは現時点でないんでしょうか。

官房長官:基本的にはですね、原子炉にしっかりと水を注ぎ込んで、炉が水から出ないような状況、あるいはそういう出る状況を短くすると。それから炉の圧力が高くなり過ぎないように、温度が上がれば圧力があがりますので、その場合には、ベント等の措置をして圧力を下げると、これが基本的な対応で、それは共通していると聞いております。その水を別のところからポンプ等で注入する必要性が生じた場合には、それはできる体制づくり。それから圧力が上がりましたら、ベントの措置をして、圧力を抜く措置、これに備えた措置はそれぞれ準備を整えて頂いているというふうに報告を受けております。

記者:昨日、1号機について、その燃料棒が露出したということを把握した時点で、政府として水素が充満して爆発が起きる可能性というのは予測していたんででしょうか。

官房長官:昨日もですね、いろんな情報に基づいて万全の策を取るということに全力を注ぎ、なおかつそれをやってきたつもりでおりますが、特に昨日開いた(ああいった)爆発の映像等ご覧になった方々はいろいろな不安をお持ちだろうというふうに思います。当然今同時並行して、水位の上昇等のモニター、それから放射線の量のモニター、これしっかりと進めて頂いているところでありますが、同時にできるだけ可能性のある、特によくない可能性のある炉については、できるだけ早くご報告をした方がいいだろうということを昨日の経緯を踏まえて判断したものですから、全体の状況について細かくご説明をするための段取りの前に、事実関係そして安全のレベルについて確認ができましたので、ご報告をしている、ということでございます。

記者:昨日のですね、爆発が起きる前に1号機にも燃料棒が露出していることが分かりましたけれども、その時点で水素が充満して爆発が起きることを、事前に政府はその情報を入手していたんでしょうか。

官房長官:これちょっと昨日の時点の状況情報を整理して、改めてご報告致します。

記者:毎日新聞ですけれども、女川原発の敷地内で放射線量の数値が上昇しているという情報もありますが、把握されてますでしょうか。

官房長官:現時点で私のところまでは伝わっておりません。

記者:産経新聞のノダですけれども、今の会見は比較的すごく素早いご報告だと思うんですけれども、昨日の段階ではですね、結構国民への情報の遅れがあったんのではないかという指摘が野党からも出ているんですが、それについてはどうお考えでしょうか。

官房長官:率直に申し上げて、どういう情報の整理された段階でどういうふうにご報告をするのかということは大変悩みながらやっております。正確な情報をきちんと適切にお示しをするということは、特にこうした案件については重要だというふうに思っております。一方で、不確実な情報をお伝えするということもあってはいけないということも思っております。従いまして、確実な情報だけをしっかりとスピーディーに報告する、特に万が一の、悪い方向での可能性がある事象については、できるだけ早い段階でご報告をするということでさらに備えてまいりたいというふうに思っております。その代わりに、党内情報のみを持ってここに来て発表させて頂きますので、その他の情報について集めて整理するという段取りを取らずご報告を、今後もこうしたこともあれば、させていただきたいと思っておりますのでご理解を頂ければと思います。

記者:すみません、別件なんですけれども、宮城県のですね、南三陸町で一万人が行方不明になっているという件なんですけれども、これについてその後連絡はありましたでしょうか。

官房長官:今申し上げましたとおりですね、今はこの情報を入手してそれに対する対応についての指示等行って、できるだけ早くということでこの会見をセットさせてご報告させて頂いています。全ての情報、記憶に基づいて間違ったことを申し上げてはいけないと思いますので、他の件については改めて会見等の場でご説明させて頂きます。

記者:1号炉と3号炉についてのトラブルがあるわけですけれども、他は現状、そういうトラブルが発生していないということでよろしいんでしょうか。

官房長官:私がこの会見場に向かう段階では少なくとも官邸には報告されておりません。もしそういうことがあれば、直ちに報告がなされたというふうに思っています。

記者:確認させていただきたいんですが、建屋から空気を抜く作業、それは進んでいるという認識でよろしいんしょうか。

官房長官:これは抜く作業というよりは、基本的には建屋から空気を抜かせる、つまり元々の炉の中にあったものは外にベントなどの手続きで外に出すというのが基本的なプロセスで進んでいるわけですから、炉の中に水蒸気、あるいはそれが変形して外に出て水素になっていたとしても、基本的には外に抜くためのプロセスは元々進行しているという状況の中です。ですから、水素が発生して、建屋内にある可能性があるということのご報告を申し上げています。

記者:建屋内では水素というのは計測されているんでしょうか。

官房長官:私がこの会見に入る前の段階ではしておりません。

記者:ですと建屋から抜くということは、どうなんでしょう、抜けているということでしょうか、それは。

官房長官:まずはそこに水素がある可能性があるということで私はできるだけ早くこうした情報はお伝えたした方がいいということで、ここに来てご説明を申し上げております。これが今後どう改善されていくのか、当然抜けていくと改善されるわけでありますので、そのことについては改めて必要があればご報告をいたします。