官房長官の記者会見テキスト(2011年3月15日5時35分から21分間)

【冒頭発言】

官房長官:おはようございます。朝早くからお集まりいただきまして、大変恐縮でございます。

 先ほど総理の方から、福島原子力発電所事故対策統合本部の設置を御報告させていただきましたが、この件について私から補足的に御説明させていただきます。

 この間、福島第一原子力発電所の事故に対しましては、事業者である東京電力、そして、そこから報告を受け、必要な支援や指示を出す政府の立場とで連携をして行なってまいりました。未曾有の地震と、そして津波という事態に対して、国民の皆さんにも大変御心配をおかけする状況になっておりますが、被害の拡大を抑えるという観点から一定の対応を進めてきたところでございます。現時点では、3つの原子炉がございますけれども、1号と3号については、冷却の機能が一定の役割を果たしている。そして2号炉についても、冷却の作業は、水を入れる作業という一定の効果を上げておりますが、必ずしも安定した状態ではありません。この状態を一刻も早く安定できる状況にしていくこと。そして、まさに時々刻々変わる状況に対して、1つには、その対応を適切に行なうとともに、国民の皆さんにもしっかりと正確かつ迅速な情報をお伝えをする必要があること。こうした観点から、政府と東京電力とが場所的・物理的にも一体化し、現地の情報を同時に、一体に受け止め、それに対する対応を一体的に判断し、かつ指示を出していく。こういう態勢を取ることが、現在の状況を安定化させ、そして、事態の収束に向かわせていく上で、そして国民の皆さんの必要以上の不安を生じさせないために重要であるということを考えて、統合連絡本部を設置することといたしました。

 この対応につきましては、一例で申し上げますと、原子炉の詳細な設計図面等の基礎情報は東京電力の方にありますので、物理的な本部の場所は東京電力内に設置をいたしまして、海江田経済産業大臣、原則的にそちらで東京電力社長とともに、同時に情報を受け、そして一体となって対応方針を出していく。そして、それを菅内閣総理大臣が全体をしっかりと統一的に動かしていく。こういう体制で正確な迅速な情報を国民の皆さんにお伝えをするとともに、時々刻々と変化をする対応の一体化を進めようとするものでございます。こうした体制を確立することによって、現在の状況を安定化させ、そして、解消に向かわせていく。そうした方向への体制がより強固なものとなるものと考えております。

 なお、こうした本部の設置に対応して、政府の個別の具体的な機関をどう動かしていくのかという対応については、私(官房長官)が、ここ首相官邸の場におきまして、総理、そして、海江田経産大臣と密接に連絡を取りながら、行政関係機関等に対して指示を下していくとともに、国民の皆さんへの情報発信、説明をさせていただきます。こうした体制でしっかりと国民の生命、健康を守る。この対応をこの原子力発電所事故に対しては基より、今回の地震全体の救助、そして被災地対策を含めて進めてまいりますので、国民の皆さんにはこの大変厳しい状況の中にありますけれども、しっかりと力を合わせて、そして、この難局を乗り切っていただきますよう、御協力をお願い申し上げます。

 私からは以上です。

【質疑応答】

記者:朝日新聞の●●です。今回のその統合連絡本部を設置するに当ってですね、ここまでの東京電力の情報開示に対する姿勢にどのような問題点があったと、具体的な部分を教えて頂けますか。

官房長官:この場で私何度か申し上げてまいりましたが、情報を国民の皆さんにお伝えするにあたっては、正確な情報であること、それをできるだけ迅速に提供すること、この2つのことが重要であるということで申し上げてきました。若干現地の大変時々刻々変わっていく情報の中で、情報発信のタイミングであるとか、あるいはその正確さの確認であるとか、そういった点はさらにしっかりと徹底することで国民の皆さんに必要以上の不安をお与えしないようにしてまいりたいと。そのためにもこうした本部を設置したものであります。

記者:長官、産経新聞のサカイですけれども、総理はですね、今東電に行かれましたけれども、基本的に東電の対策本部に常駐するのか、官邸の方に常駐上級するのか、官邸は枝野さんが仕切るべきだと言われたので、どっちに総理が拠点にするのかよくわからなかったんですけれども…

官房長官:当然のことでございますけれども、この地震対策という観点からも、勿論この原子力発電所事故に対する対応は大変重要でありますけれども、現に救助の問題、そして被災者の皆さんに対する支援の問題、内閣としては大変重要な万全を期して全力で当たって行かなければならない、その課題の全体の責任者、指揮官は菅総理でございますので。従いまして、これこの後まさに今具体的な、実務的な態勢等しっかりと本部においてご相談を頂いているというふうに思いますが、菅総理においては両方の責任をしっかりと果たしていかれるものというふうに思っております。

記者:長官、今回の統合連絡本部の設置について、いつ、誰がどのような形で提案し、どのように具体的にこう検討なされたのか、この経緯を教えて頂けますか。

官房長官:総理も私もそうでございますが、東京電力と政府の情報集約、そしてその情報の伝達、そして対応の一体化というものをさらに強化しなければならないという問題意識は、この間、ほぼ共有をしていたというふうに思っておりますが、それを本部というような形で物理的にも一体化をすることのほうがより効果的であろうし、特に時々刻々変化している状況に対して、しっかりとやっていくためには不可欠であろうということは、この夜、今夜総理の方からご提言がございまして、皆がそれでいいんではないかということで、本部の設置になったものであります。

記者:TBSのヤマグチといいますが、2点をお伺いしたいんですが、先ほど長官は対応を適切に行うという意味とそれから、迅速に正確に国民に伝えると2点を主に理由としてお挙げになったと思うんですが、極めて専門的な判断が求められるその実際の具体的な対応についても、政府が主導してコミットすることがありうるということでしょうか。

官房長官:政府にも、この間もそうなんですけれども、原子力の保安院、それから原子力安全委員会というまさに専門家の言わば手段の組織があります。この両組織の中心メンバー、専門家のメンバーはこの間もほぼ首相官邸に常駐いただきまして、そうした皆さんの助言、相談を踏まえて対応をしてまいりました。統合本部が設置されますに当たって、こうした皆さんも総理と一緒に東京電力の方に向かっておられますが、こうした政府の専門家の皆さんと、東京電力の専門家の皆さんと、そしてそれ以外のこうした問題に対する専門家の皆さんと物理的には東京電力の場所になりますが、そこで一体的にこうした専門家の皆さんも英知を結集して頂いて、そして対応していくと。こういうことを考えています。

記者:それはその裏を返すと、今までの具体的な対応についても、違うやり方があったんじゃないかというその疑問があるということでしょうか。

官房長官:具体的に今様々な事態が進行して、時々刻々と変化する事態に対応しておりますので、過去の状況を検証しているわけではございません。しかし、まさに様々な英知を物理的にも一体化するほうがより迅速かつ的確な判断を進めていく上では効果的ではないかという、こういう判断をしたものです。

記者:もう一つ、今ちょうど5時から5時半にかけて、その関東一円の計画停電の判断をしている時間帯でもあったと思うんですが、総理が行くこと自体で東京電力の負担は高まる部分もあると思うんですが、なぜこの朝5時、6時前に行かなければならなかったんでしょうか。

官房長官:この点はですね、この間、東京電力に関連して原子力発電所の対応と、そしてこの計画停電で国民の皆さんにご迷惑をお掛けするこの対応と、両方同時並行で走ってきております。総理や私は職責上、両方の問題に関与してきているわけではありますが、東京電力のこの対応については、まさに対応の内容、種類が全く違っておりますので、全く別のメンバーで別のラインで行っておりますので、その点の心配はない、問題はないと思っております。

記者:ただ計画停電は別にしても、なぜこの時間帯だったんですか。それは2号機の状態が非常に切迫してるからという判断もあったということですか。

官房長官:いや、2号機については切迫しているという認識ではありません。2号機については注水がなされておりますが、その状態が必ずしも安定したものではない。それは間違いありません。これを一刻も早く安定した状態にすることが事態を収束させていく上で、大変重要であると、こういう問題意識は持っております。そうした状況の中で従来から、先ほどお話しましたとおり、一体的な運営も重要であろうという問題意識を持っておりましたが、具体的にということで、そういう判断を致しましたので、それならばまさに事態、一刻一刻変化している状況でありますから、できるだけ早いほうがいいだろうということで、深夜というか早朝でありますけれども、早速実行に移ったと、こういうことであります。

記者:その2号機に関してなんですけれども、その圧力が下がっているのに今注水を開始して、水位がなかなか上がらないというところに、国民が非常に不安を覚えている部分であるんですけれども、原因は基本的に例えばその別のところから抜けたりしているのか、ただ注水というのか、何らかのあれで入らないのかとか、そこら辺は今どういう状況になっているのか。

官房長官:私が時間どれぐらい前でしょうか、1時間ぐらい前でしょうか、もうちょっと前になるでしょうか、それぐらいのタイミングで私と同席しております、これは具体的には海江田大臣だったでしょうか。細野補佐官だったでしょうか、が現地の吉田所長と直接連絡を取らせて頂いておりますが、その時点での認識はまずそもそも水位計そのものが、これは機能していない。これは1号機、3号機、2号機と状態が変化をしていくプロセスの中で、いずれもある段階から水位計については機能しないということが、この間の経験上、なってきております。従って、水位計の数値が上がっていないということは、水位がどうなっているかという判断材料にはならないというふうに思っています。水位がどうなっているかということを見るためには、圧力とそれから実際に水が入っていているのかどうか、この2つの関係でこの間、判断をしてきております。これは専門家の皆さんのほぼ一致した認識に基づいて、そういった判断を致してきております。そうした前提に基づけば、水が入っている、ただし入るのが不安定であると、これが認識であります。

記者:読売新聞のシミズと申します。結局弁が不具合があったとか、閉じたという報道が一部あったんですけれども、原因は何なんでしょうか。

官房長官:弁を開け続けるための機能が不安定であるというのが、私の理解でございます。こうした技術的な詳細については、まさに今回統合本部を設置した目的の1つでありますので、技術的な側面については統合本部の元で具体的、詳細、専門的にご説明を迅速にしていける体制を今組み立ているところでございます。

記者:今現在弁の問題は完全に解消されたんでしょうか。

官房長官:いや、まさにそこが必ずしも安定した状態で収束の方向に向かうというプロセスに、必ずしも入れていないということの中で、そうした方向にしっかりと進んでいくためにも、まさに時々刻々変わっている状況に迅速に対応する必要があるということで、統合本部を立ち上げたものです。

記者:その弁が不安定だから、容器内の圧力が一定化しないために、水が入るのも不安定だという認識でよろしいでしょうか。

官房長官:そこの詳細がメカニックまさに専門家の皆さんに分析を頂きながら、やっているところでございますが、弁が不安定であると、この事実関係は間違えありません。そして、圧力が変化している、これも間違えありません。それと相関関係をもって、水が入る状態となかなか入りにくい状態とがある。こういう関係の状態にあるというふうに聞いております。こうした状態をしっかりと水が安定的に入り続ける状況に向かわせるためにも、迅速に統一的な対応本部を作ったと、こういうことです。

記者:TBSのホソヤです。2号炉については、1号炉と3号炉と同じように、水素爆発する可能性というのは現段階でどういう状況でしょうか。

官房長官:こうした場合にはあらゆる可能性について想定をしながら、対応しなければいけないというふうに思っておりますが、昨日の会見でも申し上げたかと思いますが、2号炉の建屋の上部に空気が抜ける状況になっている蓋然性が相当高いというふうに認識いたしております。この場合には水素は軽い気体ですので、どんどん建物に充満せずに出て行くと、これであれば、大きな爆発が起こる可能性は低いと。こういうふうに、これは専門家の皆さんのご意見に基づいて認識を致しております。

記者:テレビ東京のシノハラです。現段階では2号炉は空焚きの状態が続いているという認識でしょうか。

官房長官:水位の状態が、これは正確に認定、測定できる状態ではありませんが、水が一定程度以上は必ず入っているだろうという状況であります。ただし、まさにその水が入っていく状態が安定しないという状況でございますので、そうした中でこれの安定を図っていく、こういう状態です。

記者:産経のサカイですけれども、安定しない状態が続いた場合ですね、どういう被害が考えられるんでしょうか。

官房長官:安定しない状態であってもですね、きちんと水がある程度入っていて、冷却ができている状態であれば、現状が維持されるということになります。しかし、しっかりと水で満たして、それが継続的に安定的に冷却を続けるという状況に入れば、これは収束に向かっていくと。こういうことですので、一刻も早くそういった状況を作りたいというふうに思っています。

記者:すみません、共同通信のオカムラです。統合本部の政府側の体制、常駐する方の体制や人数というのは今どうでしょうか。

官房長官:海江田副本部長、そして細野補佐官が政治家としては現地に、これはほぼ常駐ということになります。当然閣議やそれから全閣僚による対策本部等ございますし、海江田大臣には原発以外の担当職務でございます。こうしたことはできるだけ副大臣や私が可能な範囲で対応しようと思っております。それにしてもそういった問題がございますので、ほぼということですが、政治家この二人です。それ以下の体制については、今東電ともご相談をしながら、そして専門家の助言も頂きながら、まさに今組み立ているところだと思っています。