官房長官の記者会見テキスト(2011年3月22日16時36分から16分間)

【冒頭発言】

官房長官: 私(官房長官)から1件、人事案件について発表をいたします。原子力発電所事故への対応等のため、総理に対して情報提供や助言を行なっていただくため、本日付で東京工業大学原子炉工学研究所長の有冨正憲さん、東京工業大学原子炉工学研究所教授の齊藤正樹さん、両名を内閣官房参与に任命をいたしまして、先ほど総理より辞令を交付いたしました。お二人は原子炉工学の分野において優れた識見を有しておられることから、原子力発電所の安全対策に関して助言等を行なっていただくことといたしております。

【質疑応答】

記者:産経新聞のノダですけれども、文科省が実施しました土壌モニタリングの調査結果で、原発からですね、40キロ離れた地点の土壌から放射性ヨウ素が1キログラムあたり4万3千ベクレルを記録したということを伺っているんですが、この数値に対する評価と、そのような土壌でですね、育った農作物の食品の安全性についてお伺いします。

官房長官:当該地域の空間の放射線量については、高い方で5マイクロシーベルトパーアワーということでございますので、当該地域におられる方について健康被害を及ぼすものではない。それからこの土壌の放射線濃度、放射能濃度についてはですね、これは現在、専門家の皆さんで分析をして頂いているところでございます。

記者:読売新聞のクリバヤシです。福島第一原発のですね、3号機などへの放水作業の進展とその現在の危険性について政府の認識をお願いします。

官房長官:3号機については、ハイパーレスキュー隊の消防車による放水を今日の午後行って頂いている。終わったか終わらないかぐらいではないかというふうに思います。それから4号機については、コンクリートポンプ車による放水の準備を午前中に整えて、午後状況を見ながらこれを実施するという報告を受けております。現在、圧力、それから温度等について様々なモニタリングをし、放射線濃度についても様々なモニタリングをしております。当然、放射線濃度がですね、一定の高い水準にありますので、しっかりとそれについてのモニターをしながら作業をして頂くということになるわけで、そうした意味では作業にあたって頂く皆さんには大変な状況のなかでご苦労頂くということでありますが、そうしたことをしっかりとやりながら、できるだけ安全に配慮しながら作業を進めて頂いていると、こういう状況であります。

記者:朝日新聞のサトウです。農林水産省によりますと、政府が昨日出荷停止を指示した品目以外でですね、返品とかですね、売買契約の破棄というのが相次いでいるという話がありました。こういった明らかに風評被害なんですが、これに対する政府の対応というのはどういう考えでしょうか。

官房長官:今回、出荷制限の指示を出したというのはですね、大変保守的な基準値でありますけれども、それを超えたものについては市場に出回りませんよというこういう措置を政府としてとらせて頂いた。逆に言えば、市場に出ているものについてはですね、そういったものの水準にすら達していない、リスクがないということであります。そのことはですね、いろいろな手段を通じて、関係者の皆さん、最終的には消費者の皆さんにご理解を頂くことだというふうに思っておりますが、政府としては関係流通機関、及び消費者の皆さんにそうした事実というものをですね、できるだけ周知をして、知って頂いて、不安なく口に入れて頂けるように、そして不安なく流通に乗せて頂けるように、さらに努力をして参らなければいけないと思っております。

記者:産経新聞のノダですけれども、すみません。先ほど伺った件なんですが、40キロ離れたところから4万3千ベクレルという件で、そこで育った農作物の食品の安全性については今把握されている情報ではどういう状況になるのかという。

官房長官:農作物についての放射線については、現にホウレンソウと原乳についてですね、一定のかなり保守的な基準値ですけども、それを超えたものについて出荷規制をいたしております。それからこの2つの品目に限らずですね、関係機関、都道府県に対してですね、放射線の濃度の測定を強く求めて、それを厚生労働省で集約しているところでございまして、現時点でこれについてですね、昨日の私の会見以降、新たに基準値を超えたものの報告は現時点ではございません。また今日の集約がまとまれば、厚生労働省から発表があろうかと思っております。

記者:現時点ではそうだと思うんですけれども、これからその土壌でですね、育つ農作物へはですね、一定の影響を与えるとみられているということなんですが、それについて。

官房長官:まずは影響がどの程度あり得るのかということ自体を、専門家の皆さんに分析を今して頂いています。同時にそこで生育された作物についてのモニタリングは現に最大限やっておりまして、これをさらに強化をし、今後も続けていくということになります。従いまして、万が一にも影響がある場合には、しっかりとそうしたことをモニタリングの中から拾ってですね、対応をするべき態勢を整えているところであります。

記者:時事通信のコウケツです。内閣官房参与の設置なんですが、改めて何ですけど、この方たちは一体政府の中でどういう役割を果たすことを期待されて任命されたのでしょうか。

官房長官:お二人ともですね、いわゆる原子力発電所についての、あるいは原子炉工学についての日本を代表する専門家であるというふうにお伺いをいたしております。この福島の原子力発電所の問題についてはですね、現時点はもとよりですね、これからかなり一定の期間にわたってですね、しっかりとした政府としての対応をとっていかなければならない。当然、原子力安全保安院、それから原子力安全委員会、政府の機関の、直接の機関の皆さんにもこれから頑張って力を発揮して頂かなければならないわけでありますが、まさに我が国の英知を結集するということの中でですね、特に様々な数字やデータに基づいてですね、できるだけ迅速に様々な知見を提供して頂くというようなことでですね、対応に誤りのないようにご助言を頂いていく、こういう役割を期待をしております。

記者:その今おっしゃったように、国の機関としては保安院や安全委員会があるわけですし、当事者としては東京電力っていうのがあるわけですけれども、そうしたところの専門家がいる中で、あえてこういう方を置いていくっていうのは、機関に対して政府として信頼性に、なんて言うんですか、自信がもてないというか、●●の面で信頼性がおけないというふうにもみえるんですけれども、その点についてはどうでしょう。

官房長官:今回の原子力発電所の事故に限らずですね、今回の地震、津波の災害を含めてですね、我が国にとって、あるいは世界にとっても過去に経験のしたことがないような大きな国難を今乗り越えていかなければならないという状況の中に私たちの国は置かれております。それに対応するにあたってはですね、国の総力を挙げて力を発揮をして頂くということが必要であるということだというふうに思っています。そうした意味では、もちろん東京電力、原子力安全委員会、それから原子力安全保安院、それぞれ専門家がいて、この間最大限の努力をしてきて頂いているというふうには思っておりますが、さらに我が国には様々な分野にですね、これに関する専門的な知識や経験をお持ちの方がおられるわけですから、そういった方のお力を借りない方が私は不自然ではないかと思います。

記者:このお二人の設置というのは、総理の強い希望によって設置が決まったという理解でよろしいんでしょうか。

官房長官:当然、内閣の参与、内閣官房の参与でございますので、総理と私でご相談をしてお願いをすることを決めました。

記者:産経新聞のノダですけれども、本日ですね、民主党の安住国対委員長が総理と会談して、その際に復興庁の設置をですね、検討するように要請したと伺っているんですが、政府の現時点での考えをお聞かせください。

官房長官:これだけ甚大な被害が現にあるわけでございまして、これに対しての今被災者の支援が一番中心になっているフェーズ、段階であると思っておりますが、今後は当然、復旧、そして復興へということに政府は役割をしっかり果たしていかなければならないと思っております。それに対してはですね、名称とか組織の具体論は別といたしましてもですね、1つのまとまった機能を果たしていくシステムなり、組織なりというものは当然、考えていかなければならないというふうに思っております。

記者:河北新報のヤマザキと言います。本日のですね、夕刊報道等によりますと、ガソリンがですね、足りないっていう、現地でまだまだ足りなくて、パトカーですが、現地のパトロールに支障をきたしているという報道がありました。それで東北地方にとっては車っていうのは本当に大事な公共機関というか、移動機関で、首都圏の方々になかなか理解されないんでしょうけども、車がないと生活が立ち行かない地域が非常に多くてですね、今回の被災地もそうなんですが、タンクローリー、要するに原料は出してもタンクローリーを運転する方が現地に行きたがらないという現状があるらしくて、運転手不足とかですね、そういった問題もあるようですが、それを政府としてですね、もっと強力な対策をとるお考えというのはございますでしょうか。

官房長官:何日前だったでしょうか、海江田大臣が経済産業省で被災地にガソリン等の燃料を送る、そのためのシステムと言いますか、態勢をご報告をさせて頂いたかというふうに思っております。それに基づいて、特に東北3県等にガソリン等の燃料を送るシステムは、一定の効果を上げているという報告を受けておりますが、残念ながらそれがしっかりと広範な被災地のすべての部分に行き渡ってない部分があろうかというふうに思っております。これについては、生活支援の本部を作りましたので、そういったところに具体的な情報が寄せられれば、個別にもですね、どうしてそこに行っていないのかということの調査、把握と、そして現にそこに送り届けるという作業をですね、しっかりと進めて参ってきているはずでありますし、再度それは徹底して参りたいと思います。すみません。先ほど私、ホウレンソウと原乳の2品目の出荷規制をしていると申し上げました。3品目、かき菜を含めて3品目、失礼しました。

記者:毎日新聞のクリヤマです。先ほど復興庁についての質問の関連でですね、民主党の09年衆院選マニフェストで、災害時の迅速救済などのために危機管理庁、括弧仮称ですけれども、創設するということを盛りこんでいます。復興庁、復興対応にあわせてこの危機管理庁も何か検討するという考えはありませんでしょうか。

官房長官:こうした事態への対応の仕組みを抜本的に見直したいという思いは、野党時代から持っておりましたが、残念ながらそうした仕組みを組み立てる前にですね、こうした大きな災害ということになってしまいました。もちろん、将来的にはですね、今回のことをしっかりと検証した上で、緊急対応のシステムをさらに強化するということは、当然やっていくべきことだろうというふうに思っておりますが、私はいまはまずは被災者の生活支援であり、そして復旧であり、復興でありということがまず中心の軸として進んでいくと。そうしたことが進んでいく中でですね、さらに強力な緊急対応の仕組み作りというのは出てくる話ではないかなと思っています。

記者:読売新聞のクリバヤシです。復興作業も始まってきてですね、補正予算というのは避けられないことだと思うんですけれども、現時点で政府としていつまでにですね、補正予算については必要になってくるかっていうことをお願いします。

官房長官:必要に応じてですね、遅れることなく対応していかなければならないということを考えておりますが、まだ具体的にいつの時点でということを申し上げるには、少し早いのではないかなというふうに思っています。

記者:朝日新聞。アメリカのですね、原子力規制委員会が、福島第一原発について安定化の直前だと、こういう評価を。これは政府も同様の見解かどうかお伺いします。

官房長官:まさに政府としてですね、この事態をこれ以上悪化させないことのために、全力を挙げる立場が政府の立場というふうに思っております。もちろん今の状況について、様々な皆さんが様々なご評価をされることはあることだろうというふうに思っておりますが、私どもの立場は、決して楽観的なシナリオとか想定に立ってはいけないと。常に緊張感を持って対応していかなければならないと、そういうふうに私は思っています。

記者:産経新聞のノダですけれども、今日のですね、参院の予算委員会で、農水省の筒井副大臣が出荷制限の指示が出たですね、ホウレンソウとか原乳以外の農作物についても、事故と因果関係があれば補償の対象になると述べたんですけれども、それについてどの程度考えているのかお聞かせください。

官房長官:筒井副大臣ですかね、直接の答弁、前後のところまでまだ入ってきておりませんが、今回の事故、そしてそれによる出荷規制、出荷規制ということを国の指示として行う以上は、当然のことながらそれによって生じるものについては、当然のことながら補償の対象になるということが今朝ほども申し上げました。はっきりとしていることでございます。それ以外についてはですね、色々な可能性は否定はいたしませんが、今の段階で確定的に申し上げるべきものではないと思っています。

記者:テレビ朝日のフジカワと申します。今の関連でですね、風評被害についても国民に周知したいというふうに先ほどおっしゃいましたけれども、現に始まっているその風評被害についても補償の対象となるとお考えでしょうか。

官房長官:今朝ほどから私繰り返し申し上げておりますのは、国が国の権限をもって出荷を規制をする指示をしている以上は、それについては補償するのは当然のことであるということを申し上げました。それ以外についてはあらゆる可能性があると思いますが、現時点で何か予断を与えたり、予断を持ったりしているものではないということです。