官房長官の記者会見テキスト(2011年3月29日9時51分から16分間)

【冒頭発言】

官房長官:おはようございます。まず私から何点か申し上げます。まず、本日の閣議の概要について申し上げます。一般案件等5件と法律の公布、政令、人事が決定されました。大臣発言として、総務大臣から「国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく報告について」、財務大臣、農林水産大臣、国土交通大臣から「独立行政法人の長の人事について」、文部科学大臣から「独立行政法人及び国立大学法人等の長の人事について」発言がございました。

次に、本日の閣議において決定された内閣府の人事案件について報告をいたします。3月31日付で迎賓館長の小林秀明が退官し、その後任に4月1日付で元特命全権大使(オランダ国駐箚)の渋谷實を当てることといたしました。

 それからもう一つ人事案件でございますが、原子力発電所事故への対応等について、総理に対して情報提供や助言を行っていただくため、本日付で多摩大学大学院教授の田坂広志氏を内閣官房参与に任命することとして、先ほど総理より辞令を交付をいたしました。田坂氏は原子力工学の分野において優れた識見を有しておられることから、安全対策に関して助言等をいただくこととしております。

【質疑応答】

記者:読売新聞のクリバヤシです。福島第一原発についてお尋ねします。原発の敷地内からですね、微量のプルトニウムが検出されたんですけれども、それについての危険性とですね、過去の火災や水蒸気爆発などによってですね、敷地外に拡散している可能性についてはどのように認識されてますでしょうか。

官房長官:東京電力の報告によれば、土壌5検体、5カ所から採ったものについて、プルトニウムが確認をされました。検出されたプルトニウムの濃度は、環境中に存在するフォールアウト、大気圏内核実験による放射性降下物の影響と思われるレベルと同程度、濃度は同程度でございます。ただし、そのプルトニウムの種類がですね、フォールアウトと異なるものが入っている。そういう濃度比率になっているということでございますので、今回の事故の影響が考えられるということでございます。従って、引き続きですね、この事故の影響によって、高い濃度のプルトニウムが検出されるということになると、これは対応が必要でございますので、引き続き継続的にモニタリングを続けていくということでございます。

記者:これまでも広範囲でですね、放射線、ヨウ素などは計測されたと思うんですけれども、プルトニウムについても広範囲で今後モニタリングを強化していくということでしょうか。

官房長官:ここは専門家の皆さんの助言を頂きながら進めなければいけないというふうに思っておりますが。ここまでのところはですね、プルトニウムは相対的に重いということですので、周辺地域のモニタリングをしっかりと行っていくことでですね、広範な地域でのモニタリングの必要性等についての一定の判断はできるという種類の説明は受けておりますが、実際に、濃度としては高いものではありませんけれども、原子力発電所に由来するプルトニウムが出ていると考えられる状況でございますので、さらに専門家の皆さんに助言を仰いで、どうした地域でモニタリングを行うべきかということは、常にチェックをして参りたいと思っております。

記者:朝日新聞のサトウです。2号機のですね、建屋の外側から高濃度の汚染水が検出されたということで、注水すればするほど汚染される現状にあるかと思います。昨日班目さんはですね、どう処理できるか知識を持ち合わせてないと、こういう発言をされています。これはですね、今現状は手詰まりの状況と言っていいんでしょうか。

官房長官:原子力安全委員会の委員の先生方もですね、原子力関連の専門家の皆さんといってもですね、それぞれ分野があるわけで、班目委員長のご専門はそういった分野ではないというふうに思っておりますので、それは委員長としてのご認識ではないかと、個人としてのですね。今、安全委員会のご助言も頂きながら、原子力安全保安院と東京電力を中心にですね、出てきている水をどうやって安全に排出をするか、そしてそれをキープするか、確保するかということについては様々な検討作業を進めていって頂いております。現時点で、こういうやり方をしますと確定的なことをご報告申し上げる段階ではありませんが、様々な検討、手段についての精査が行われている状況であるというのが現状です。

記者:日本テレビのヒラモトですけれども、今様々な方法を模索しているという段階だということですけれども、今質問にも出たように注水と排水のバランスをどうやっていくかとっていうのが非常に難しい問題だと思うんですけれども、これいつまでに目途をみて、いつその作業を開始をしたいというそういうお考え、今の時点で目途とかたっているんでしょうか。

官房長官:まず注水については原子炉、あるいは燃料棒の温度が高熱になって空だきになるということは避けなきゃならないということで、この冷却は優先して進めざるを得ないだろうというふうに思っています。一方で、水についてはですね、できるだけ、そういう状況ですからできるだけ早い方がいいということで、作業を進めて、検討と作業を進めて頂いているという状況でございますので、本当に可能な限り早くというのが今認識している状況です。

記者:じゃあその排水が必要だからということで、注水を止めるということは今ないということですか。

官房長官:少なくとも両方の状況を見ながら、注水の方もですね、これはやっぱり必要があればやらざるを得ないだろうというふうにみております。

記者:やらざるを得ない。

官房長官:やらざるを得ない、つまり、注水を止めることは、そのことによって燃料棒が高熱になる、空だきのような状況になるということは、これは全体の状況からみれば優先的に阻止しなきゃならない状況だろうというふうにみています。ただ、できるだけ注水量少ないなかで、燃料棒の温度が上がらない状況をキープすると、このための努力は進めていって頂く。ただ、やっぱり抜本的には水を抜いていくということを、できるだけ早く進めなければいけない状況だというのは間違いないと、この通りだと思います。

記者:すみません。あと先ほどプルトニウムにちょっと戻ってしまうんですけれども、プルトニウムが出たということは、核燃料の損傷がですね、進んでいるという専門家の見方あるんですけれども、その分析は政府として今どのように認識されていますでしょうか。

官房長官:先ほど申しました通りですね、核燃料に由来をすると思われる濃度比率のものが検出をされているわけですから、燃料棒から出ている可能性がやっぱり高いというか、ほぼ間違いないだろうという状況だろうということではございます。これは、周辺の溜まり水の濃度が非常に高いことなどとあわせてですね、燃料棒が一定程度溶融したと思われるということを裏付けるものである。このこと自体は大変深刻な事態でありますが、そのことによる周辺部への影響をいかに阻止し、収束させるかということに、いま全力を挙げている状況です。

記者:ニコニコ動画のナナオです。大震災前にですね、国民は毎日、菅総理の発言やお姿を目にしていたわけですけれども、震災後は18日間で数回のみで、この状態に違和感を覚える国民が少なくございません。危機的状況が長期化、日常化していくなかで、今後総理は国民に対してどのように日々どのようにメッセージを発信し、リーダーシップをとっていかれるのでしょうか。

官房長官:ここは震災に対する対応、そして原子力発電所に対する対応、最高責任者としてですね、しっかりとその対応に万全を期しないとならないという、これが最優先課題であるというふうに思います。と同時に、内閣総理大臣として国民の皆さんにしっかりとしたメッセージを発信をしていくということも、それに次いで重要な役割であることは間違いないというふうには思っております。できるだけ、国民の皆さんへの発信については、関係大臣、あるいは私が代われるところは、この間代わって、そのことによって最高指揮官としての総理の業務をできるだけ優先できるようにとやってきているところではございますが、いまご指摘のように、長期にわたっているという状況のなかで、どう総理としての国民へのメッセージというものの時間というかエネルギーを確保するかということは、この間も検討してきているところでございますし、いまの指揮官としての判断、指揮との兼ね合いのなかで、ある程度の時間とエネルギーを国民へのメッセージに注がなければならない必要性は、日々高まっているとは認識しています。

記者:国際社会に対して海外からいろんな支援とかメッセージがあると思うんですが、それについてのやはり総理として、国際社会に対してメッセージを発信していく必要があると思うんですが、この点はいかがですか。

官房長官:これについては、この間も、オバマ大統領はじめですね、幾つかの国の首脳とは電話会談等でですね、直接、支援への感謝等を含めてですね、コミュニケーションをとっているところでございますが、さらにですね、外務大臣と役割分担もしながらですね、国際社会とのコミュニケーションもしっかりとっていかなければならないというふうには思っていま。

司会:すみません。ここから進行ご協力ください。

記者:ウォールストリートジャーナルのハヤシです。今朝一部の報道で東電の一時国有化を政府が考えているという報道がありましたけれども、そのような可能性があるのかどうか、あるとしたらどの程度検討が進んでいるのか教えてください。

官房長官:現時点で、そういった検討を政府の機関で行っていることはないというふうに認識をいたしております。まずは東京電力としてこの事故の収束に全力をあげると、その上でしっかりと事故の影響を受けている皆さんに対する対応をしっかりと行って頂くと、まずはそのことに全力を尽くして頂くということについて、政府としてしっかり指揮をするという段階だと思っています。

記者:時事通信のコウケツです。内閣参与に選ばれた田坂さんなんですけれども、大学の方では原子力の専攻を現にされていらっしゃらないと思うんですけれども、なぜ田坂さんが選ばれたのかということと、官房参与全体をどういう基準で、誰が選んでいるのでしょうか。

官房長官:原子力工学の分野に識見を持たれた上でですね、様々なこういったリスクコントロール等についての知見もお持ちであるという総合的なところでお願いをしたということだと聞いております。原子力に関する分野っていうのは非常に専門性が分かれて幅広いものですから、炉の専門家であるとか放射線の専門家であるとか、様々な分野の専門家と、それからそれを横断的に一定の知見を持っていらっしゃる方、両面が必要だというふうに私も思っております。それからどなたをどうお願いをするかという基準は、なかなかひと言で申し上げるのは、抽象的に申し上げるのは難しいんですけれども、民間の方含めてですね、様々な方にこの間、ご意見、ご助言は頂いているところでございますが、政府の立場をしっかりと持って頂くことでですね、公務員としての様々な責任と同時に公務員だからできる部分というところがありますので、そういう身分を持って頂いた方が、そのご助言等を頂く上でプラスであるというような状況であれば、そうした参与等の立場を持って頂いた上で、助言を頂くと。それ以外の立場の皆さんからも、純粋に民間の方からも、ご助言はたくさん頂いている、そういうところに違いがあると思っています。

記者:被災者のですね、被害認定の基準についてお尋ねします。現場では、被災地ではですね、半壊状態、全壊ではなく、半壊にとどまっている世帯の方がですね、避難所に入れずに、ガスも水道もない過酷な自宅での居住をですね、強いられているっていうケースが現在みられています。また自治体がですね、そういった方を救おうとしても国の基準があるために全壊と半壊、救済ができないということが聞かれますが、こういった半壊世帯で厳しい環境で過ごされている方をどういう対応をするべきかと、今回の被害認定基準、内閣府で決めているものですが、これの弾力的な運用、このことについてどうお考えでしょうか。

官房長官:被害認定基準がそもそも直接ですね、避難所で受け入れてサポートする、しない、できる、できないということとダイレクトに繋がっているとは私は認識をしていないんですけれども、つまり例えば家屋の損壊による事実上の補償のような話がございますが、そういうところは全壊と半壊で、従来から制度がありますが、それについての全壊の認定については、昨日申し上げましたが、かなり柔軟にやっていこうなどという措置はとっております。避難所に避難を頂く云々ということについては、その全壊か半壊かということが直接の基準にはなっていないと理解をしておりますが、その点が現場の市町村等で誤解、あるいは徹底がされていない、あるいはもしこの間の、色々と大きな動きがある中で、もしどこかの部局から誤った指示がなされているとすればいけませんので、それは確認をして、全壊半壊にかかわらず、当面の避難のことについては事実上、それぞれのご自宅で生活できないという事情に基づいて、対応すべきであると思っていますので、その点の確認をした上で指示、徹底したいと思います。

記者:現場ではですね、実はヒアリングの段階でですね、被災状況をみてですね、やっぱり重い方を優先してっていうような運用がですね、一部なされているようなんで。

官房長官:それはそれぞれの地域ごとの避難所のキャパシティーとの問題で、現場の皆さんのご判断でそういったことはあり得るだろうというふうに思います。ただ、それについてはできるだけ避難所のキャパシティーそのものについてですね、国の方の支援でより広範に必要な方が受けられるように、こういう支援はさらに強化しなきゃいけないだろうと思っています。

司会:すみません。ちょっと国会なんで、あと一言だけで。

記者:毎日新聞のカゲヤマですけど、昨日の発言なんですけど、池田経済産業副大臣が原発事故の行方について、「私としては予見し得る最悪の事態を考えるが、それ以上は神のみぞ知る」と発言しました。池田氏は発言は撤回はされましたが、これついての受け止めをお願いします。

官房長官:私はとにかく菅総理を先頭にですね、全力を挙げて、これ以上悪化させないための努力を最大限努めていくのが、政府の役割だと思っております。